洗剤・石けん・界面活性剤

“シャンプーは洗剤”と言われる方、“石けんと界面活性剤は別物”と間違っておぼえている方など色々おられますので、洗剤、石けん、界面活性剤の3つの関係はどうなっているのか整理してみましょう。

1.洗剤

シャンプーの語源と小史 」の資料 (*2)から洗剤の定義を引用しました。
洗剤とは“固体の表面に付着したよごれを除去して清浄にする目的で用いられる物質の総称であり、水もしくは有機溶剤を仲立ちにしてこれらの洗浄作用を高める働きをする物質の総称である”と定義されています。
家庭用洗剤の法規制による分類は資料 (*2)から引用していましたが、2003年10月にこのページを改定した機会に資料 (*5)を参考に、一部カラー化、加筆して作成しました。

図1 シャンプーの語源と歴史

この表からシャンプーは洗剤の一部ですが、化粧品のグループに属しますので、製造は化粧品の技術基準に従い、販売も薬事法に従うものであることがわかります。

セッケンは前頁でソープの語源にも触れたように歴史の古い洗浄成分であり、界面活性剤の一つです。
ただ、上記の表のように家庭用の洗剤を衣料用、台所用、住居用のいずれでも、「セッケン」と「合成洗剤」に大別したために、"合成洗剤=界面活性剤で、石けんは界面活性剤ではない”という誤解を生んでしまったものと思います。

2.石けん(セッケン)

天然の油脂とアルカリ(苛性ソーダ:水酸化ナトリウムなど)を反応させるか、油脂から脂肪酸をとり出した後、アルカリを反応させて作るアニオン界面活性剤(下表参照)の一つです。
化学反応させて作りますので化学的にみれば当然合成界面活性剤で、原料が天然物なので天然系(合成)界面活性剤として分類されます。

3.界面活性剤

“界面活性剤”という言葉は大きな誤解を受けています。“界面活性剤⇒化学物質⇒からだに悪い”という印象を持ちがちですが、そうではありません。色々な種類がありますので、その特徴をよくご理解いただくことが大切と思います。

界面活性剤の分類方法もいくつかありますので、それぞれ解説しました。
化粧品に使われるものは一般に低刺激性ですが、そのなかでもピンからキリまでありますので、アニオン界面活性剤の例を「 低刺激性ランキング」として別に載せました。

“化学物質”と言う言葉も誤解を受けていますので、このページの最下段に(注)として書きました。

個人のホームページで、美容の科学を詳しく解説している貴重な資料“ 美工房 四季彩 ”があります。その中の「 界面活性剤 」「 化学って何? 」がお勧めです。

  • (注)他のページで「界面活性剤」「化学って何?」として引用しているのは上記のホームページです。

また、合成洗剤と石けんの関係を中心に毒性、安全性についても詳しく解説しているメールマガジンがありましたので、 欄外に紹介しました。

3・1 天然と合成

天然物には多くの方が安心感を持っておられますので、界面活性剤における「天然と合成」の区別を示すと次のようになります。天然物で界面活性剤の機能を持つものには下表のようにシスチンなどがありますが、使用量は限られてす。

ほとんどの界面活性剤は化学反応を用いてつくられますので、化学的に分類すれば、合成界面活性剤です。合成であることは当たり前のことなので(合成)は省略されることがあります。この中でさらに原料が天然物か石油かによって大別されます。

天然界面活性剤 レシチン、サポニン、カゼインなど
天然系(合成)界面活性剤 石けん系、アミノ酸系、脂肪酸エステル系、高級アルコール系など
石油系(合成)界面活性剤 高級アルコール系、アルキルベンゼン系、アルファオレフィン系など

高級アルコールは油脂からも、石油からも製造できますので、両方に分類できます。詳しくは「 界面活性剤の種類と特徴 」として載せました。
高級とは炭素の数が6個以上の脂肪酸やアルコールに付けられた化学的な名称で、高級品ということではありません。
まれに、シャンプーなどのPR文で“界面活性剤を含みません”、または“合成界面活性剤を使用していません”と表現しているものもありますが、これは天然を強調するための方便であって、界面活性剤なしではシャンプーは作れません。
化粧品における天然物の安全の考え方は、「 天然系とはなんですか 」をご覧下さい。

3・2 界面活性剤の働き

「水と油」という言葉は混ざり合わないこと、融合しないことの表現に使われるくらい、均一にすることは困難です。この水と油を溶け合わせる働きをするものが、界面活性剤です。
一つの化合物のなかに水と馴染みやすい部分(親水基といいます)と油に馴染みやすい部分(親油基といいます)を両方持っているので、その仲立ちをすることができます。(3・3に図を書きました。)
界面とは水と油のさかいの面を意味し、活性とは両者を仲立ちすることを意味しています。洗剤、化粧品、食品など幅広く使われます。
なお、親油基は水とは疎遠だという意味で疎水基とも呼ばれます。

3・3 界面活性剤のイオン系による分類

界面活性剤の分類方法は色々ありますが、最も多く用いられているのが、イオン型による分類で、界面活性剤を水に溶かした時にイオンになるか(イオン型)、ならないか(非イオン型)で分類し、さらにイオンの種類によって分類します。

図2 界面活性剤の分類

この形から界面活性剤のシャンプー類への使い方を説明できます。人の肌や毛髪はマイナスイオンを持っています。
イオンは磁石と同じで、マイナス同士は反発し、プラスとマイナスは引き合います。洗うときは、マイナスイオンを持つアニオン界面活性剤を使うと、肌や毛髪のマイナスと反発し、界面活性剤を仲立ちとして肌や毛髪から油を引き離してくれます。
一方、リンスなどではカチオン界面活性剤のプラスイオンと毛髪のマイナスイオンが引き合ってカチオン界面活性剤が髪の表面にしっかりとつきます。

アニオン界面活性剤
陰イオン界面活性剤とも言われ、洗剤,化粧品など身の回りで広く使用されています。
私達の生活で良く知られている石鹸は西暦紀元前から使用されており、戦後、急速に普及したアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ(LAS)もこのグループです。
化粧品では低刺激が要求されますので、LASが使われることはありません。
石鹸と同様、高級脂肪酸を原料にしてアミノ酸を反応させ、石鹸より低刺激性にしたアミノ酸系のアニオン界面活性剤もあります。
シャンプーの主成分として使われることが多いので、その特性が商品の特徴に大きく影響します。
低刺激性のものが多々開発されていますが、自ずと差はありますので、別途「 低刺激ランキング」として整理してみました。
カチオン界面活性剤
陽イオン界面活性剤とも言われ、洗浄力はありませんが、殺菌効果、リンス効果、帯電防止効果などの機能があります。
化粧品、シャンプーなどに使われる界面活性剤のなかでは、比較的刺激の強いものがあります。(なかにはアミノ酸系で特に安全性の高いものもあります。)
両性界面活性剤
文字通り、一つの分子の中にアニオン性とカチオン性の部分を含んでいるもので、皮膚に対して低刺激性であるためシャンプー、ボディシャンプーなどに補助的に用いられています。
非イオン界面活性剤
比較的古くからある多価アルコールエステル型(ショ糖脂肪酸エステルが代表例)と乳化製品によく用いられるポリエチレングリコール型があります。

3・4 界面活性剤の分類

界面活性剤は色々な観点から分類して説明されることがありますので、「 界面活性剤の種類と特徴 」として別のページを設けました。


(注)化学的にみれば、水も空気も人もすべて化学物質です。
一つの花の香りは数百種類の化学物質から成り立っていると言われます。
人のからだの20%はタンパク質で、その種類は数万種ともいわれますので、化学物質のかたまりのようなものです。
このように化学物質は私たちの日常生活には欠かせない当たり前のものですから、わざわざ”化学物質”という表現はしません。
しかし、何か問題が起った時にマスコミなどで“化学物質○○○の影響でこう言う問題が発生しました”と、改めて”化学物質”と言う言葉を使います。
このため、化学物質=からだに悪いものとの印象ができてしまったようです。
化学物質、合成化学物質という言葉に対する一般のかたの誤解を解いて行くのも化学技術者のつとめの一つですが、なかには逆に「化学を脅かしの材料にする」者もおり、残念なことです。
化学屋のつぶやき 」のところで触れました。
合成とは人が化学反応などを利用して、その化学物質を作った時に一般に使われますので、これを界面活性剤に適用すれば、天然物以外は「合成界面活性剤」ということになります。

あるメールマガジンより

地球のために、あえて合成洗剤を使う

名前は過激ですが、合成洗剤、石けん問題についてどちらにも偏ることなく科学的な正しい見方を提供しようとする筆者の熱意が伝わる資料です。