シャンプーの語源と小史

シャンプーとは “すすぐ” という意味のヒンドスタン語からきたものといわれます。 (*1)

今ではカーシャンプー、ペットシャンプーなど液体洗浄料の一般名として広く使われていますが、単にシャンプーという場合にはヘアシャンプーを指していることが多いようです。

日本では昭和の初めに「モダンシャンプー」、「タマゴシャンプー」などがシャンプーという新しい名前と共に売り出され、昭和30年頃まで続きました。 (*4) これは石けんシャンプーです。

昭和30年(1955年)に高級アルコール硫酸エステル塩を主成分とする全く新しいシャンプーが発売され (*4)、現在ではこの系統のものが主流になっています。

ボディシャンプーが出現したのは1970年代で、家庭風呂、シャワーの普及とあいまって固形石けんとは異なったムードを楽しむ製品として台頭して来ました。 (*4)

この機会に関連する言葉の語源を見てみましょう。

ソープ
(soap、石けん)
ローマ時代の初期にローマのサポー(Sapo)の丘では生贄(いけにえ)の羊を焼いて、したたり落ちた油が、燃やした木の灰と混じり合って土にしみ込み、川に流れ込みました。この川で洗濯物を洗うとよく落ちることに驚いたので、この地名が語源になっています。 (*2) (*3)
シャボン フランス語のSavonに由来するという説もありますが、時代的に合わないので、結局スペイン語のXabon(Jabon)がなまったのが、確からしいとされています。 (*4)
石けんの産地、イタリアの地中海沿岸都市サボナに由来するとも書かれています。 (*3)
石けん 石鹸という言葉が日本に入ってきたのは慶長12年(1608年)といわれていますが、脂肪酸のアルカリ塩であるセッケンとは異なるようです。 (*2)
シャボンという言葉が明治の初め頃まで一般に使われていましたが、堤磯右衛門石鹸などが市販されるようになると、当時としては石鹸の方が今でいうナウイ言葉であったようです。 (*4)
現在はカタカナ、英語、フランス語などが全盛ですが、時代の好みというのは面白いものですね。

ゆあみ

からだを洗うことは “ゆあみ” (湯浴み)でもありますので古代のゆあみから入りましょう。
日本では古代から “みそぎ”(禊)というきよめの儀式があり、病気や災難、罪悪などのけがれを祓うために水でからだを洗いきよめることが行われてきました。
これは五穀豊穣を祈る行事にもなり、後年、仏教の伝来により沐浴(もくよく)を功徳としていました。 このために浴堂や湯屋が建てられ、病人や庶民に対する施しとして施浴(せよく)が行われてきました。 最も古いのは光明皇后(701~760)といわれます。
鎌倉時代には町湯が次第に増え、江戸時代には 銭湯(風呂賃が永楽銭1銭であったことに由来といわれる)が町民や下級武士に好まれ、次第に社交の場を兼ねて繁盛したようです。

ヨーロッパではモヘンジョ=ダロやローマの古代遺跡から大浴場跡が発掘されており、古くから“ゆあみ”は日常生活と切り離せないものであったことがわかります。 ただ、貴族以外は簡単に利用できるものではなかったようです。
12世紀になると街に公衆浴場が設けられ、14世紀には野外浴場も作られていました。

このあたりのことは風呂の語源や楽しい絵も含めて資料 (*4)に詳しく解説されていますので、ご興味のある方にはお奨めです。
こうして振り返ると昔も今も、やはり入浴は楽しいものですし、どなたにも入浴を楽しんでいただけるようなシャンプーを開発して行くのが私共開発に携わるもの責務だとの思いを強くします。


参考資料  お話その1、2の項では次の資料から引用させていただきました。
     この場所を借りて御礼申上げます。

 (*1) 田村健夫、廣田博共著:香化粧品科学 -理論と実際- フレグランスジャーナル社
 (*2) 奥山晴彦、皆川基編集:洗剤・洗浄の事典 朝倉書店
 (*3) 中西茂子著:洗剤と洗浄の科学 コロナ社
 (*4) 藤井徹也著:洗う -その文化と石けん・洗剤 幸書房
 (*5) 皆川基、藤井富美子、大矢勝編集:洗剤・洗浄の百科事典 朝倉書店