第4回 “洗う”と界面活性剤の選び方

良いシャンプーの選び方 イラスト

シャンプーの役割は“ 洗う”ことですから 洗浄成分が必要です。洗浄成分としてほとんどの場合、 界面活性剤が使用されています。

ただ、界面活性剤と聞いただけで不安感を持つ方もおられますが、そのようなものではありません。

最も歴史の古い石けんを中心にして少し詳しくみてみましょう。

石けんの歴史

紀元前四千年前から製造されていたといわれますのでロマンを感じます。

当時の用途は薬だったようです。

長い間ヤギの油脂と木灰で製造されてきましたが、8世紀にはオリーブ油が使用され始めました。19世紀になって、原料もヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、豚脂など多様化されて大いに発展し現在の石けんに繋がっています。

日本に入ってきたのは織田・豊臣時代ですが、江戸時代でも庶民は白アズキの粉や糖袋などでからだを洗っていたと言われ、石けんが製造・普及するのは明治中期以降です。(最初は医薬用。)*1

セッケンと“合成”の対比

石けんの製造は化学反応を伴うもので、原料の確保、製造技術ともに当時の化学技術の粋を集めて作られていますので化学的には合成界面活性剤です。

ところが日本では、セッケンは“合成”に対比するものとして扱われることがあります。

この原因を考えてみると洗剤の定義に起因しているようです。

洗剤の定義

専門書(*2)に書かれた洗剤の用途別分類を示すと第1図の通りです。
人体以外を対象とする3つの用途のすべてにおいて“合成洗剤”と“セッケン”に区分しています。これが“セッケン”を“合成”と対比する概念を生み出してしまったようです。

この合成洗剤は石油を原料とする界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ(以下LASと略します。)が主流であったので、 合成洗剤=界面活性剤で、“セッケンは界面活性剤ではない。”と考える人も出てきましたが、正しくありません

化粧品におけるセッケン

第1図のように“セッケン”は“合成”と対比するものではありません。

しかし、合成洗剤における印象が強かったので、“石けんシャンプー”の対比として“合成シャンプー”という表現も一部で使用されています。

なお、この図では“シャンプー”と“セッケン”に分けられていますが、今では化粧品の用途別分類は廃止されています。

図1 洗剤の用途別分類と関連法規
図1 洗剤の用途別分類と関連法規 *は筆者追記

界面活性剤における安全性

合成洗剤で使用されるLASは催奇性が一時問題になりました。(今では世界レベルで否定されていますが)

このことが“界面活性剤は怖いもの”と受け取られてしまったようです。シャンプーにLASは配合されませんのでこの問題とは無関係です。

また、高級アルコール系の汎用シャンプーをネズミの毛を剃った部分に塗った試験も“怖い”理由にされていますが、実際のシャンプーをする条件とはかけ離れていてあまり意味がありません。もし、この試験の通りなら大半の方の髪、頭皮に異常が出ているはずです。汎用シャンプーは健常者にとってはコストパフォーマンスにすぐれており、1つの選択肢です。

ただ、アトピー性皮膚炎の方をはじめ特に低刺激性を求める場合は、アミノ酸系や石けん系などご自分に合ったシャンプーの選定をお勧めします。


 次の本から引用させていただきました。
   *1 藤井徹也著洗うその文化と石けん・洗剤
   *2 皆川基ら編洗剤・洗浄百科事典

良いシャンプーの選び方

2008年4月から1年間、NPOアレルギーネットワークさんの会誌「あんだんて」に連載されました。下記のリンクよりそれぞれのページをご覧いただけます。


上記資料は、アレルギーのある方にとっての「良いシャンプー」の選び方です。一般的な良いシャンプーの条件、選定時のキーワード(低刺激、天然系、無添加、香り、アミノ酸、弱酸性など)を整理した「 シャンプー選び 」がありますのでご利用下さい。ここでは「 良いシャンプーの選び方 」の8回~11回に相当する部分を詳しく書いています。