アトピー性皮膚炎の本

はじめに

シャンプーの開発、販売をしていると、お客様から“アトピー性皮膚炎について分かりやすく書いた本はないでしょうか?どんな本がよいでしょうか?”とのお問合わせをいただくことがあります。

あんだんてがシャンプーを開発・販売開始した2001年の頃は、「買ってはいけない」という本が爆発的に売れ、マスコミはステロイド製剤を悪魔の薬のように扱っていました。このような背景もあってか高額なアトピー治療法(アトピービジネス)が幅を利かしていました。

情報のあり過ぎがアトピー性皮膚炎を難病化させてしまったと言われるくらい色々な情報が氾濫していましたので選択に迷うのも当然と思います。

一方、あんだんてがシャンプーの開発を進めようと思ったのは、アミノ酸系シャンプーがアトピー性皮膚炎の方に大変喜ばれていることを知ったのが、きっかけでした。

従って低刺激性シャンプーの設計法を調べるとともに“アトピー性皮膚炎とは何なのか”を正しく理解して設計に反映させるべくアトピー性皮膚炎の本を徹底的に読みました。

この時の知見を少しでもお客様に活用していただこうと思って作成したのが、この「 アトピー性皮膚炎の本」です。

当時(発売は2001年)に較べれば現在(2011年)は落ち着いてきましたが、治療法の進歩もありますのでこのページの改訂を逐次行ってきました。また、アレルギー関係のNPO法人との交流により新しい本の情報も得られましたので加えました。これらを改定経過として次項にまとめました。

改訂経過

あんだんてのホームページを開設したのが、製品発売1年後の2002年です。この時に「アトピー性皮膚炎の本」を載せました。

2004年8月の改訂:
初版から2年経過し、その間の発売されたものを加えるとともに全面改訂しました。
2005年3月の改訂:
アトピー性皮膚炎については医師が書かれたものが多いのですが、一部にはアレルギー団体(患者と医師、その他の部門の専門家からなりNPO法人であることが多い))の出版もあります。 (11)がその例ですが、他のNPO法人からも出版されたので追加しました。両NPO法人ともアレルギーの会全国連絡会の主要団体として活動しています。
あんだんてとしても交流があります。
2005年8月の改訂:
同じくNPO法人の事務局長である赤城智美さんの本が出版されました。
この機会に2冊追加しました。
2011年11月の改訂:
久ぶりに改訂して新しい本を加えるとともに全面的に改訂しました。
この「アトピー性皮膚炎の本」を書いた2002年ころは「医者の数だけ○○説がある」と揶揄される面もありましたが、治療のガイドラインができてから落ち着きました。それとともにステロイドパッシングも徐々に収まってきたように思います。
全体の流れとしては2005年あたりからスキンケアを重視する本が出てきています。
また、この頃から読みやすさを工夫した本が出始めています。

本の選定基準

1: 総合的解説書優先:
先ず、アトピー性皮膚炎の全体像をしっかりつかんでいただきたいと思いますので、原則として特定の治療法の本は載せませんでした。 (17)は例外。
特に最初に載せた2001年ころはアトピービジネスが盛んなころで各種の本が発刊されていましたので総合的解説書を優先しました。
2011年の改訂に当たっては、総合的解説書に加え比較的特定の観点(東洋医学、薬剤師など)から書かれたものも加えました。本の選択範囲も広がりましたので「特にお勧めの本」のコーナーを設けて本の特徴を紹介するようにしました。
2: 図書館にあるものを優先:
少しでも多くの方に読んでいただきたいので横浜市を例として図書館にあるものを優先しました。一度お読みいただき、納得されたら購入してお手元においていただきたいからです。このサイトで紹介している本は全て「お勧めの本」ですから「特にお勧めの本」のコーナーでのコメントがなくても図書館などで手に入るなら読まれるとよいとお思います。
3: アレルギー団体の本も追加:
患者と医師がチームを組んである患者団体の本は医学的にしっかりした基盤を持ちながら日常生活に役に立つように書かれていますので2005年頃から意識して加えるようにしました。ここのため図書館にあるなしに関わらず選定しました。

特にお勧めの本(目的別の選定のヒント)

ここに挙げた本は、著名な先生方が書かれた素晴らしい本で全てお勧めですが、敢えて特にコメントすれは次の通りです。ご希望に合わせてご利用下さい。数が多いので見やすいように便宜上「前半」、「後半」と分けています。
前半:2002年(初めてアップ)~2005年10月改訂まで No.1~20
後半:2011年11月改訂 No21~33

2002年にはじめて「アトピー性皮膚炎の本」というサイトを作成した「おわりに」として簡単なコメントを載せていたのですが、2011年11月の改訂では「特にお勧めの本」として独立しました。

1: アトピー性皮膚炎の全体像を知る目的で敢えて1冊に絞れば前半では (7)、後半では (27)です。
(7)は、視野が広く、読者が選択する余地を残しているので押しつけがましくなく、それでいてある方向に読者を導いているのが印象的でした。看護婦さん向けの講座をベースにしているのでやや難しいところがありますが、古典的な価値を感じます。これに最近重点が置かれているスキンケア、新しい薬(タクロリスム軟膏)を加えると理解しやすくなります。
(27)は、横浜中央図書館などでは「医療・健康情報コーナー」に置かれて禁帯出です。それだけ多くの方に読んでいただくように選定されています。
同じく基礎的に学ぶには前半では (3)(20)、後半では (21)です。
2: 日常生活の指針を優先して選べば前半では (6)です。
7)とは逆に患者はこのような意識を持て!と方向性を示し、ぐんぐん引っ張って行く魅力があります。
前半の (11)以降の本は全般的に日常生活に活かすことを意識して書かれています。医師が書かれたものでは (1)(16)(20)(27)などです。
前半の (1)は化粧品に詳しい須貝先生が書かれています。1995年当時にスキンケアに注目しておられた先見性が素晴らしいです。横浜の図書館にはないのですが、古典的名著です。
次項のアレルギー団体の本にも詳しく書かれています。
3: アレルギー団体(患者と医師から構成されNPO法人が多い)の本は、前半では (11)(18)(19)後半では (30)(31)です。
ここではアトピー性皮膚炎だけでなくアレルギー全般に関するものを含めています。
日常生活の指針が詳しく載っているのは当然ですが、アレルギーの方に“生き方そのもの”をアドバイスしているのが特色で勇気づけられます。特に生き方に注力していのは (11)(19)です。
(11)は、アレルギー全般に対象が広がりますが、日常生活の指針として詳しく、広い視点で、かつ、わかりやすく書かれています。
生活を改善して行くことにより、「アレルギーでよかった」という感想を持つことすらある生活を目指しています。2000年の発売当時としては画期的な本で、私としては絶賛したい本です。
(19)ではシャンプーの例として「あんだんてシャンプー」が紹介されています。
4: 何よりも、やさしく、わかり易い本をお望みなら前半では (10)(15)(20)、後半では (22)(26)です。
特に (20)は、“アトピー性皮膚炎の難しいことは別にして日常生活ではこれを守ればよいのだな!“と納得します。(22)は、エッセイとして書かれていて、「院長への禁句・・・」などなど次の話が読みたくなります。目次が手書きで親しみやすく編集されています。
5: こころの問題を中心に書かれているのは、前半では (15)、後半では (26)です。
前半の (15)は病院という特殊な環境下で治っても意味がないと入院中も普段着で街中に外出するに指導されています。それまでの治療法に対する大きな問題提起です。必読の本ですが、自費出版でおいてある図書館などが少ないのが残念です。
(26)は本格的に心身医学的にアプローチしています。それでいて読みやすい本です。こういう本が出版されるだけ最近では治療の幅が広がっていることを実感させてくれる本です。
6: 治療法を広く知るなら (8)です。
(2)では、海外の治療法も紹介されていて治療の重点の置き方が違うこともわかりますし、日本のよさもわかります。ここに出てくる「足して10で発病」はアトピーの理解に最適だと思います。
7: 後半では特徴ある本も加えました。
東洋医学の考えも取り入れたのが (23)です。
薬剤師さんが書かれてスキンケアに重点を置いたのは(23)です。
赤ちゃんを対象にしたのは (28)(33)です。
8: 特殊な例として2004年8月の改定では敢えて藤沢先生の「アトピー治療革命」 (17)を加えました。
他の先生方とは重点のおき方が少し違うと思いますが、最近(2004年)話題になった考え方が取り入れられ、結果として広い視点でアトピー性皮膚炎を見直すことができます。
交感神経と副交換神経のバランスの問題ととらえますので、これに関係する日常生活すべてが検討の対象になります。
自然治癒力というと自然に治ってしまう印象を受けますが、免疫力を生かすために日常生活を自分の責任で変えて行く気概が要求されますし、結果に対しても自己責任となります。(*)
それを乗り越えるためには良き医師と出会うことも不可欠なのでしょう。
(ただ、私からみれば(17)はバランスのとれた治療の本で「革命」と命名するほどの治療とも思いません。藤澤先生のシャンプーについての認識については疑問もあります。)
(*)藤澤先生は「脱ステロイド治療」で損害賠償の訴えを受け、地裁段階では敗訴しています。(2004年6月)
この本を読むと一部の技術評論家なる人たちが「人には自然治癒力があるから、ステロイドなんていらない」と言って脅かしの種にしているのが、いかに馬鹿げたことであるかがよく分かります。
(最近、統合医療などの話を聞く機会がありましたが、自然治癒力を生かすためには日常生活の改善、治療に取組む姿勢、結果に対する自己責任など、生易しいことではないと実感しました。魅力ある療法ですが、それなりの覚悟も必要です。)

要点の整理

本によって重点の置き方が違いますので、総合的にどのように理解すべきなのか、その要点を私なりに次の9項目に分けてみました。

各項目につき簡単なコメントをつけていたのですが全体のボリュームが多すぎて、長くなりすぎましたので、「 アトピー性皮膚炎の理解」として別のページを作りました。

  1. アトピーとアトピー性皮膚炎(言葉の由来と定義)
  2. アトピー性皮膚炎の原因と発病
  3. 治療の目標
    治療の目標は治癒ではなく生活に支障がない状態を維持することです。
  4. ステロイド外用剤、その他の薬剤
  5. 日常生活の注意(最近はスキンケアに重点を置く本が多くなりました。)
  6. 生き方(2011年11月の改訂で新設)
  7. 心の問題(2004年8月改定で追加)
  8. かゆみ
  9. 民間療法とアトピービジネス
  10. 子供用の本(2004年8月改定で追加)

アトピー性皮膚炎の本一覧

横浜市を例にとれば、ここに挙げた本はすべて公立図書館に所蔵されています。
アトピー性皮膚炎」を含むで検索すると2004年8月現在101件ありますので、その中から医師が書かれたものを主体に私の視点で選定しました。2年強前に、この「アトピー性皮膚炎」を書いた時からは8件増えてました。
2011年11月改訂時には121件になっていました。

(No) 書名(タイトル) 著者 出版社 出版年
1 アトピー性皮膚炎のスキンケアと治療 須貝哲郎/著 フレグランスジャーナル社 '95.11
2 アトピー治療最前線 NHK取材班/編 岩波書店 '97.02
3 アトピー性皮膚炎を治す 青木敏之/著 日本評論社 '99.11
4 アトピービジネス 竹原和彦/著 文藝春秋 '00.06
5 からだがかゆい 高森健二/監修 成美堂出版 '01.02
6 成人のアトピー性皮膚炎 戸田淨/著 (株)法研 '01.06
7 アトピー性皮膚炎 最新・賢い患者学 聖路加国際病院健康講座 衛藤光/監修 双葉社 '01.06
8 アトピー性皮膚炎を治す 週間朝日/編 朝日新聞社 '01.08
9 アトピー性皮膚炎の最新知識 日本皮膚学会患者相談システムに学ぶ そこが知りたいQ&A 竹原和彦/著 医薬ジャーナル社 '01.09
10 アトピー性皮膚炎 専門医がやさしく語る 日本皮膚科学会/編 暮らしの手帳社 '01.11
11 アレルギーの快適生活術 アレルギーネトワーク/編 風媒社 '00.01
2004年8月に12から17を追加
12 子どものアトピー性皮膚炎Q&A 戸田淨/著 (株)法研 '00.10
13 アトピー性皮膚炎とこころ
 ~医療の現場から~
玉置昭治/著 自費出版 '01.12
14 アトピー性皮膚炎 五十嵐敦之/著 保健同人社 '02.03
15 小・中学生のためのアトピー性皮膚炎のはなし 北九州アレルギー懇話会/編 診断と治療社 '03.04
16 大人のアトピー性皮膚炎はここまで治る 高橋夫紀子/著 主婦と生活社 '03.12
17 アトピー治療革命 藤澤重樹/著 永岡書店 '04.04
2005年3月に18を追加
18 やさしくわかる アトピーの治し方 アトピッ子地球の子ネットワーク著 永岡書店 '04.07
(初版'99)
2005年12月に19、20を追加
19 アレルギーと楽しく生きる 赤城智美著 現代書館 '05.10
20 おとなのアトピー
治療とライフスタイル~メイク術まで
江藤隆史著 小学館 '05.11
2011年11月に21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33を追加
21 新しい アトピー治療
副:誤った治療に振り回されないために
西岡清著 講談社 '06.3
22 アトピー性皮膚炎の治療は難しくない
副:読むセカンドオピニオン
柴崎淳夫著 法研 '06.7
23 子どものアトピー
副:家庭でできる漢方 2
仙頭正四郎著 小学館 '07.9
24 大人のアトピー、アレルギー&皮膚の悩み相談室
副:あなたもアレルギーかもしれない!?
永倉俊和著 主婦の友社 '07.11
25 図解 アトピー食と薬でスキンケア 田中貴子著 農山漁村文化協会 '08.2
26 もっとよくなるアトピー性皮膚炎
副:皮膚疾患への心身医学的アプローチ
檜垣祐子著 南山堂 '08.5
27 アトピー性皮膚炎
副:正しい治療がわかる本
古江増隆著 法研 '08.10
28 赤ちゃんのアトピー&アレルギー肌ケアがわかる本 佐々木りか子監修 主婦の友社 '09.6
29 アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2009 日本アレルギー学会専門部会 協和企画 '09.10
30 患者だからわかるアトピー性皮膚炎
副:素朴な疑問から治療法まで 患者の会がつくる
日本アレルギー友の会著
宮本昭正綜監修
小学館 '10.4
31 アトピー・アレルギー克服応援ブック
副:必ず道が見つかるアドバイス
アトピッ子地球の子ネットワーク 合同出版 '10.8
32 こどものアトピー性皮膚炎
副:正しく知ろう
赤澤晃著 朝日者出版社 '10.6
33 最新赤ちゃん・子どものアトピー&アレルギー大百科 末広豊監修、伊藤節子ほか監修 ベネッセコーポレーション '10.9

アトピー性皮膚炎について思う

ここに取上げた本はそれぞれ主流をなす先生方のもので素晴らしい資料であると思います。
アトピー性皮膚炎を理解していただく上では十分ですが、さらに欲を言えば

アトピー性皮膚炎の要因の複雑さ、時間的な変化を考えれば、本来、「目的は1つ。手段は多様」であるべきではないかと思います。
しかし、実際に展開される話は「目的は1つ、手段も1つ」に偏りがちです。
ここでは特定の治療法は取上げなかったにも関わらず、この傾向があることに気がつきます。
目的は「患者のQOLの向上」にすっきりまとめられないものでしょうか?
治療も診断は皮膚科医が中心になるにしても、他の分野の医師、カウンセラー、もっと広い範囲の専門家(住環境、化粧品、化学技術者など)と柔軟に連携し、プロジェクト的に進められないものでしょうか?
日常的には医師と患者の一対一の対応になりますが、考え方としては広い視点が反映されるものでありたいと思います。

この視点がはっきりしないから、アトピービジネス(高額な費用のかかる)が広がる温床を作っているように思います。
これが生まれた背景への総括(反省)が十分になされていないように感じます。
民間療法についても、ただ批判するだけでなく、良いものは部分的に取り入れるなどの柔軟性も必要と思います。

全体的に推奨する治療法の正当性が強調され過ぎているように感じますし、悩んでおられる患者の琴線に触れるような温かさがもっと欲しいと思います。
「共に考えましょう」と呼びかけているものもあり、こう言う本や情報に出会うとほっとします。
良い例が「アレルギーの快適生活」 (11)です。
また、「アトピー性皮膚炎とこころ」 (13)も多くの示唆を与えてくれます。

インターネット上の情報

大学や専門医の組織の資料は総合的に書かれていますので、新しい薬剤など広い範囲で調査できる利点があります。
一方、個人の医院、薬局の資料は温かみがあって、分かりやすく具体的なのが魅力です。
専用のページを作成しました。