あんだんての生い立ち

シャンプーの発売以来、満5年近くになりますので、その間の歩みをまとめてみました。(2006年記)
さらに新製品の発売を機に2010年に加筆しました。

契機

あんだんての開発者(以下、私)は長く化学会社に勤め、その大半は研究開発に従事してきました。(プロフィールは最終段)
リタイア後、あるベンチャー企業のオーナーに出会いました。
アミノ酸系シャンプー や家庭用洗剤を会社の第2の柱とすべく、オーナー自ら実験・評価し、開発に真摯に取組んでおられました。
この シャンプーの開発 アトピー性皮膚炎 などお肌のトラブルを抱えた方が心待ちにしておられる姿に接しました。
大きな組織の化学技術者として過ごし、家庭用品などを扱ったことのない者としては、“ こんなに喜んでいただける物があるのか!”との驚きと感激がありました。

基礎調査と基本構想

少しマーケティングに関わってみると、自分ならこうしたいとの思いもつのりましたので、 

  • 低刺激性シャンプー の設計はどうするのか?
  • アトピー性皮膚炎 とは何なのか?

について一から勉強し直しました。

研究生活が長く、本や文献を調べるのはお手の物なので、化粧品関係の友人、技術士仲間など元同僚の協力も得て素材や処方例など徹底的に情報を収集しました。

高い安全性データが揃い、実績の豊富な素材を厳選してみると、アミノ酸、糖類、脂肪酸に関係が深い成分が多く含まれていました。

これらの成分は私たちのからだ、生命の維持に関わりの深い成分でもあります。詳しくは「 あんだんての発想」をご覧ください。

そこで、思い切って『アミノ酸、糖類、脂肪酸またはその誘導体でシャンプーに使われている素材は何か?』との発想で素材選定を行いました。

これでカバーできない部分はクエン酸、グリチルリチン酸などの生体成分を選定し、環境にもやさしい素材のみとしました。

この基準で選定したら、自然に旧・表示指定成分を含まない処方(いわゆる無添加処方)となりました。

配合設計と開発目標

  1. 高い安全性と使用実績の揃った素材を厳選する。
  2. なるべくシンプルに設計する(シンプル イズ ベスト)

の基本方針で臨みました。

シンプルに設計するのはベビーシャンプーの設計思想であり、アレルギーを避けるためにもベストと考えています。
さらに、低刺激性を最優先したので、弱酸性、無香料、無着色としました。

ある会社が配合実験に若い研究者を充てて開発に協力してくれました。この研究者自身がアトピーであったこともあって、熱心に取組んでくれるとともに、“アトピーの者にとって、風呂に入るのは大変な苦労なんですよ”と聞かされました。

この言葉から、単に低刺激を追究するだけでなく、どなたでも気軽にお風呂を楽しんでいただくことを開発目標とし、配合設計にも反映させました。

ピリピリしないだけでなく、きめ細かな泡立ち、ドライ後の髪のまとまり、からだのしっとり感など 使用感でもベストのものを目指しました。

また、配合設計だけでなく、ラベルデザイン、マーケッティングなど、すべてに楽しさ、安心感を持っていただくように努めました。

ここまで、 全てにこだわりを持つことで、自分なりの理想に近づけたと思っています。このなかから、「自然の恵みで楽しい入浴」というキャッチフレーズが生まれました。一寸、入浴剤みたいですが、開発の経過から、今でも使っています。

ラベルデザイン

日頃から、シャンプーなどの表示は英語などを使ってかっこよく見えますが、小さくて見にくく、使う人は後回しだと感じていました。

画家 に見やすくて浴室を楽しい雰囲気にしてくれるデザインをお願いしました。絵と色で区別するのはユニバーサルデザインの考え方です。

香りもリラックス効果がありますが、人にとってはマイナスになることもあります。その点、目で楽しむのはプラス面だけです。

モニタリング

親族、友人、会社関係など多くの方が参加して下さいましたが、なかでも行きつけの女性理容師さんが開発開始当初から参画し、プロならではの評価をしてもらえたのも大変参考になりました。

開発を心待ちにして下さる方もあり、励みになりました。

会社設立

会社設立に当っては妻に社長を引受けてもらい、私は開発に専念しました。発売後は、経理の心得のある妻が、販売・資材・物流・経理を担当し、技術・マーケッティングを私が担当しています。

マーケティング関係資料の原案は私が作成していますが、技術屋丸出しになるので主婦感覚、女性の立場からチェックしてもらい、まさに二人三脚で進めてきました。

リタイア後のチャレンジなので、無理しない方が良いとの家族の提案で社名は「あんだんて」(“歩く速さで”を意味する音楽用語)としました。開発も販売も、自分なりの理想を求めて一歩一歩確実に前進して行きたいと思います。

2001年(平成13年)4月発売

2001年4月に発売を開始しました。この4月に薬事法の改正があり全成分表示が義務付けられました。2年間の猶予はあったのですが、積極的に情報を提供することを会社のミッションとしていたので直ぐ表示しました。

当時 ラウロイルメチルアラニンNaを主剤、 コカミドプロピルベタインを補助とする処方はありませんでした。ラウロイルメチルアラニンNaは低刺激性できめ細かい泡立ちが特長ですので刺激緩衝剤、起泡剤として補助的に使われていました。高価で主剤としては使いきれなかったのでしょう。

あんだんての発想 」のように、私たちのからだにかかわりの深い アミノ酸糖類脂肪酸関連素材を配合し、洗浄成分だけでなく保湿成分もこの考えを取り入れました。その結果、 ラウロイルメチルアラニンNa、コカミドプロピルベタイン、ベタイン、ラウリン酸ポリグリセリル-10、トレハロースという「 あんだんて独自の処方」となりました。

評判がよかったためか 発売5年目から「そっくり」さんが登場しました。よいものが世に増えることは結構なことだとは思いますが、苦労して開発した独自の処方だけに一寸複雑な思いもあります。

あんだんての発想以外でも独自であることの例を挙げると、ラウロイルメチルアラニンNaのメーカーが開示している推奨処方はラウラミドプロピルべタインとの組み合わせでした。しかし、実際に配合してみるとモニターの評価がいまひとつでしたが、コカミドプロピルベタインに替えてみると大幅に改善されました。化学的には同じような成分ですが、使用感に大差がでます。ここが配合研究の面白いところでもあります。

このあたりのことは追って開発秘話としてまとめたいと思います。

ホームページの開設

発売1年後、シャンプーの内容を良く知っていただくことと、正しい情報の提供をミッションとしているのでホームページを開設しました。

パソコンに堪能でマーケティングの経験もある娘に全面的に依存して開設しました。必要に迫られればパソコンは憶えられるもので、社長も私も日常的なことには困らなくなりました。

マーケティングについては若い感覚も必要なので、今でも娘の意見も聞くようにしています。

ホームページの開設のおかげで、アレルギー団体、理美容室などとの交流を通して、広い分野の知識を得られてレベルアップできました。またマーケッティング面でもプラスになりました。

2006年4月に全面改訂し今のデザインとしました。
あんだんてシャンプーが美容室向けに最適であることを見出して下さった 美工房 四季彩さんがホームページの作成・管理運営にも詳しいことを知り依頼したものです。
この改訂で全体の構成とショッピングカートを変えたせいか、これを契機にサイトを訪問して下さる方が大きく増加しました。このため2007年に配送センターを設けました。

アレルギー、アトピーへの取り組み

ホームページを開設して1週間でヤフーの検索に出るようになり、喜んで「あんだんて」でも検索して出会ったのが、会誌「あんだんて」を発行しておられる NPOアレルギーネットワーク さんでした。

会の目的の第1に「科学的知識の普及」をあげておられることに共感し、賛助会員として入会させていただきました。会誌「あんだんて」を通して勉強させていただくとともに弊社製品をテストしていただき、2003年9月、共同購入品に選定されました。

この年の11月、アレルギーネットワークさんを通して「第10回アレルギーの会全国交流会inくまもと」に出展。アレルギーの方にはまず少量で試していただけるように、(髪、からだ)シャンプーの40mlボトルを発売しました。さらに一昨年の「第11回 in丹波」、昨年の「第12回in浜松」に出展し、今年も参加の予定です。

これらのワークが伏線となって、昨年8月から「 らでぃっしゅぼーや 」さんの「アトピーエイド」の商品として販売していただけるようになりました。

さらに、2005年末からは「アトピーエイド」が、 らでぃっしゅぼーや さんの全会員を対象とした商品カタログ『元気くん』に載るようになりましたので、あんだんての事業として大きく飛躍することができました

2005年4月からはNPO アトピッ子地球の子ネットワーク さんに私が個人賛助会員として入会し、勉強させていただいております。

その後の展開は次の通りです。

2006年の新しい展開
「第13回アレルギーの会全国交流会in東京」に参加
「アレルギー支援ネットワーク」に入会、「アレルギーの会全国連絡会」に入会
2007年の新しい展開
「第14回アレルギーの会全国交流会」に出展
アトピー、アレルギーの4団体の賛助会員継続(2010年まで継続)
秋に、あいち小児保健医療センターで開催された「アトピー性皮膚炎とスキンケア」の講演会で「良いシャンプーの選び方」のタイトルで講演
2008年の新しい展開
「第15回アレルギーの会全国交流会」に出展および参加
アレルギーネットワークさんの会誌「あんだんて」に「良いシャンプーの選び方」を12回連載
2009年の新しい展開
「第16回アレルギーの会全国交流会」に出展および参加
「良いシャンプーの選び方」をホームページにアップしました。
2010年の新しい展開
「第17回アレルギーの会全国交流会」に出展予定
アレルギー支援ネットワークさんの「アレルギーっ子の集い・フェア」には2007年 2008年 2009年 2010年 と続けて出展しています。

アトピー性皮膚炎について学んできたことは別にまとめました。

理美容への展開とトリートメントの共同開発

ホームページ開設後、化粧品原料小辞典を掲載しているサイトに問い合せをしたのがきっかけで、美容の科学に詳しい 美工房 四季彩 さんと出会い、「あんだんてシャンプー」を高く評価していただきました。

アトピーなどを想定して主剤をラウロイルメチルアラニンNaとし、アミノ酸、糖類関係の素材を極力シンプルに設計したのですが、このことがパーマ、カラーなどの薬剤のコントロールを容易にすることを見出して下さいました。

これで、図らずも理美容室への道が開け、業務用として1000mlを発売しました。使用中に菌が入る心配がないこと、最後の一滴まで使えて小さくなり廃棄物を減らせることから、パウチパックを選定したのですが、この利点が認められて、今では個人でも多くの方にお使いいただいています。

美工房 四季彩のホームページは美容科学の情報の宝庫ですので、ここを訪れる美容師さんは研究熱心な方ばかりです。この方々との交流を通して多くのことを学ばせていただきました。

また、安全性の高い製品が欲しいとのご要望により、トリートメントを共同開発しました。素材についても詳しい方ばかりですので、配合設計の趣旨を良く理解していただき、効率よく開発を進められました。

モニタリングについては各美容室で評価していただくとともに、 ソウサリート さんを核として CHACO さんなど同業の多くの美容室とそのお客様にも参加していただきました。

その結果を受けて一昨年5月に発売し、お蔭様で好評のため今年2月からは1000gパウチパックも一般向けに発売しました。(それまでは美容室専売でした。)

インターネット販売

ホームページ開設後、1年近くたってからホームページでの直販も始め、徐々に販売も伸びてきました。

美容・健康関連商品のショッピングサイト ケンコーコム さんでも扱っていただき、販売開始後、1年くらい経ってから大きく伸びてきました。

技術屋が販売ルートもないまま、良い製品を出したい思いだけで始めてしまったので、最初は苦労しましが、お客様からのお便りやメールに支えられて今日まで頑張って来られました。

化学技術者が異分野に挑戦した形でしたが、推薦して下さる方もあって日本化粧品技術者会に入れていただいたのも励みになりました。

情報の提供

開発に着手した頃に「買ってはいけない」が話題になっており、たまたま貰って読んだ妻が困惑していました。

この種の情報は一見科学的に見える書き方をしているので、余程の専門知識がない限り消費者は惑わされ、大変不安になってしまいます。化学を専門にしてきた者からみると、誇張・曲解が多く無理難題を持ち出しているので、その矛盾を一つ一つ丁寧に解説すると妻も納得し安心しました。

専門を生かして技術士としてコンサルティング業務をするのも1つの選択肢ですが、専門家と消費者の仲立ちとして正しい情報を提供するのもリタイア組が社会貢献する1つの生き方ではないかと考えるようになりました。

この考えに共感して妻が会社設立に協力してくれるとともに、正しい情報の提供も会社のミッションとしました。

あんだんてシャンプーの販売に当っては、製品の内容を技術的に詳しく説明するのは当然として、ホームページでは、シャンプーの語源と小史から始まって界面活性剤など広く情報を提供することを心がけました。

商品をご購入いただいたお客様には、シャンプーだけに限らず身近な化学的知識について解説する「あんだんて通信」を2年にわたってお送りしました。

また、広く化粧品の安全などについてご理解いただけるように、 「お肌の?(クエスチョン)」 というホームページも開設しました。美容室など、お客様との交流で話題になった内容をQ&Aの形でまとめたものです。あんだんてシャンプーを離れ、化粧品技術者から見た中庸な考えを示すために、有田浩三の個人名で運営しています。

取替えエアレスパウチの発売(2010年6月)

アトピー、敏感肌の方を対象として開発しましたので化粧品の技術基準(未開封で3年)は満たしていますが、比較的マイルドな防腐設計をしています。このため400mlボトルを使用する時はシャンプーを出したらキャップをすぐ締める、注ぎ口に手を触れない、なるべく早く使い切るようにお願いしてきました。
よくあるお問合せ(防腐対策)

しかし、パウチパックのように容器自体が使用中に菌の入らない構造であるのが半年以上安心してお使いいただけ理想的です。

今回、400mlサイズでも 取替えエアレスパウチという方式を採用することで所期の目的を達することができるようになりました。

また、使用後はパウチのみ廃棄しますので、環境にさらにやさしいシステムです。(なお、暫くの間は従来の400mlボトルも併売します。)

開発者 有田浩三のプロフィール

都立小山台高校をへて、慶応大学工学部応用化学科(化学工学専攻)卒。 profile
2006年2月
総合化学会社 (東証1部 昭和12年創業)の中央研究所に約20年勤務。
プロセス設計が専門。化学品のみでなく、環境技術開発・販売プロジェクトに参加。
環境技術のコンサルティングを行うために技術士(化学部門)資格取得。
プロジェクトエンジニアとして専門の異なる技術者集団をまとめ、販売などとも連携を保つ訓練を積んだことが、今日大変役立っています。
精密化学品会社 (東証2部 昭和12年創業)に約20年勤務。
企画、生産、品質保証、研究開発など技術系全部門担当。(役員定年で退職)
研究所長時代に自分の専門分野ではありませんが、配合研究の奥深さ、面白さを知ったことが、化粧品の配合研究に進む伏線になったとも感じています。
技術士事務所
リタイア後、精密化学品の研究・製造技術、水処理技術を専門としてワークを始めましたが、シャンプーの開発を開始してからは重点を移し、現在はあんだんての開発担当に専念しています。
現在 有限会社 あんだんて  開発担当(技術士・化学部門)
日本化粧品技術者会正会員